名門の魔法学校を首席で卒業した私、「女のくせに生意気だ」という理由で婚約破棄される〜代わりにもらってくれたのは、入学からずっと首席争いをしていた次席のライバル王子でした〜
付近にある魔素の働きを阻害する天然鉱物――『夢醒石』。
効果はとても微弱で、拳大の夢醒石一つを持っていても大した影響はない。
しかしその数が膨大なものになれば、魔術師の魔法の力を抑え込むこともできてしまう。
この部屋の至るところに大きな夢醒石が仕掛けられていて、閉所ということもあって私は強く影響を受けているんだ。
今この瞬間、この場所は、魔術師を無力化する異常な空間へと変質している。
おそらくこれを仕掛けたのはマーシュだ。
私がこの部屋に来ることを予期して、あらかじめ夢醒石を置いたのかもしれない。
いや、断定はできないけど、私から手巾を盗み取ってこの部屋に来るように仕向けた可能性すらある。
目的はたぶん、いざとなったら私を力尽くでねじ伏せて、強引に従わせるため。
魔法が使えないのは向こうも同じだけど……
「お互いに魔法が使えないとなれば、勝つのはこの俺だ……!」
男性と女性の関係上、腕力、体格、身体機能にあまりにも差がありすぎる。
身の危険を感じた私は、なんとかしてこの場から逃げ出そうとした。
しかし走り出した瞬間に腕を掴まれて、乱暴に引っ張られてしまう。
その勢いのまま近くに置いてあったソファへ押し倒されて、腕を掴まれたまま拘束されてしまった。
私の上で、マーシュが下卑た笑みを浮かべる。
「やはり女は、非力で情けない存在だな。女が男に勝てるはずがないんだ」
「……っ!」
振り解けない。
圧倒的に力の差がある。
生物的に勝てないと本能が語ってくる。
そして今一度痛感させられる。
魔法を奪われた私は、どうしようもなく弱い存在なのだと。
「二度と俺に逆らえぬよう、その身にしかと教え込んでやる」
マーシュは片手で私の両手首を押さえる。
そしてもう片方の手をドレスの胸元に伸ばしてきた。
叫んだら殴られるんじゃないかという恐怖で息が詰まる。
私は声を上げることもできず、ただ惨めに涙を滲ませることしかできなかった。
「僕の婚約者に何をしている」
刹那――
視界の端で、見慣れた銀色の髪が揺れた。
同時に、鋭い手刀が横から振り抜かれて、マーシュの首筋に打ち込まれる。
「ぐっ――!」
その衝撃で奴は私の上から吹き飛ばされて、休憩室の机や椅子を蹴散らしながら地面に倒れた。
突然のことに呆然と涙ぐんでいると、助けに来てくれたその人は、私を庇うように前に立ってくれる。
「遅くなってすまない、ローズマリー」
「……ディル」
頼もしいディルの背中を見て、私は安心感からさらに涙を流してしまった。
そしてディルは、倒れているマーシュに細めた目を向けて、拳を力強く握りしめていた。
効果はとても微弱で、拳大の夢醒石一つを持っていても大した影響はない。
しかしその数が膨大なものになれば、魔術師の魔法の力を抑え込むこともできてしまう。
この部屋の至るところに大きな夢醒石が仕掛けられていて、閉所ということもあって私は強く影響を受けているんだ。
今この瞬間、この場所は、魔術師を無力化する異常な空間へと変質している。
おそらくこれを仕掛けたのはマーシュだ。
私がこの部屋に来ることを予期して、あらかじめ夢醒石を置いたのかもしれない。
いや、断定はできないけど、私から手巾を盗み取ってこの部屋に来るように仕向けた可能性すらある。
目的はたぶん、いざとなったら私を力尽くでねじ伏せて、強引に従わせるため。
魔法が使えないのは向こうも同じだけど……
「お互いに魔法が使えないとなれば、勝つのはこの俺だ……!」
男性と女性の関係上、腕力、体格、身体機能にあまりにも差がありすぎる。
身の危険を感じた私は、なんとかしてこの場から逃げ出そうとした。
しかし走り出した瞬間に腕を掴まれて、乱暴に引っ張られてしまう。
その勢いのまま近くに置いてあったソファへ押し倒されて、腕を掴まれたまま拘束されてしまった。
私の上で、マーシュが下卑た笑みを浮かべる。
「やはり女は、非力で情けない存在だな。女が男に勝てるはずがないんだ」
「……っ!」
振り解けない。
圧倒的に力の差がある。
生物的に勝てないと本能が語ってくる。
そして今一度痛感させられる。
魔法を奪われた私は、どうしようもなく弱い存在なのだと。
「二度と俺に逆らえぬよう、その身にしかと教え込んでやる」
マーシュは片手で私の両手首を押さえる。
そしてもう片方の手をドレスの胸元に伸ばしてきた。
叫んだら殴られるんじゃないかという恐怖で息が詰まる。
私は声を上げることもできず、ただ惨めに涙を滲ませることしかできなかった。
「僕の婚約者に何をしている」
刹那――
視界の端で、見慣れた銀色の髪が揺れた。
同時に、鋭い手刀が横から振り抜かれて、マーシュの首筋に打ち込まれる。
「ぐっ――!」
その衝撃で奴は私の上から吹き飛ばされて、休憩室の机や椅子を蹴散らしながら地面に倒れた。
突然のことに呆然と涙ぐんでいると、助けに来てくれたその人は、私を庇うように前に立ってくれる。
「遅くなってすまない、ローズマリー」
「……ディル」
頼もしいディルの背中を見て、私は安心感からさらに涙を流してしまった。
そしてディルは、倒れているマーシュに細めた目を向けて、拳を力強く握りしめていた。