名門の魔法学校を首席で卒業した私、「女のくせに生意気だ」という理由で婚約破棄される〜代わりにもらってくれたのは、入学からずっと首席争いをしていた次席のライバル王子でした〜
「――っ!?」
黒竜はここ一番の雄叫びを上げて、再び翼を動かし始めた。
影のように黒い巨体は、また空高くへと舞い上がっていき、こちらに背中を見せて飛び去っていく。
「止まって!」
私は諦めずにまた右手を構える。
しかし魔法の発動が間に合わず、黒竜は完全に射程の外へと行ってしまった。
この距離じゃ届かない。黒竜を止めることができない。
私の一撃に、数千人の命がかかっていたかもしれないのに……!
悲痛な心の叫びは、森のざわめきに虚しく消え去っていくだけで、私はただ遠ざかっていく竜の後ろ姿を見上げていることしかできなかった。
その時――
「あとは任せて、ローズマリー」
「えっ……」
視界の端を、一つの影が横切る。
それはまるで風に乗るように、あるいは羽ばたく鳥のようにして、軽やかに空へと舞い上がっていった。
その後ろ姿が、間違いなくディルのものであることに、私は自分の目を疑う。
気のせいや幻覚などではない。
ディルは明らかに……
「……飛んでる」
魔法による跳躍というわけではない。
一時的に上空に跳び上がったというわけではなく、重力に逆らうようにして完全に浮遊している。
そしてディルは泳ぐようにして、鳥よりも速く自由に空を飛び、離れゆく黒竜の背中に急接近していった。
黒竜はここ一番の雄叫びを上げて、再び翼を動かし始めた。
影のように黒い巨体は、また空高くへと舞い上がっていき、こちらに背中を見せて飛び去っていく。
「止まって!」
私は諦めずにまた右手を構える。
しかし魔法の発動が間に合わず、黒竜は完全に射程の外へと行ってしまった。
この距離じゃ届かない。黒竜を止めることができない。
私の一撃に、数千人の命がかかっていたかもしれないのに……!
悲痛な心の叫びは、森のざわめきに虚しく消え去っていくだけで、私はただ遠ざかっていく竜の後ろ姿を見上げていることしかできなかった。
その時――
「あとは任せて、ローズマリー」
「えっ……」
視界の端を、一つの影が横切る。
それはまるで風に乗るように、あるいは羽ばたく鳥のようにして、軽やかに空へと舞い上がっていった。
その後ろ姿が、間違いなくディルのものであることに、私は自分の目を疑う。
気のせいや幻覚などではない。
ディルは明らかに……
「……飛んでる」
魔法による跳躍というわけではない。
一時的に上空に跳び上がったというわけではなく、重力に逆らうようにして完全に浮遊している。
そしてディルは泳ぐようにして、鳥よりも速く自由に空を飛び、離れゆく黒竜の背中に急接近していった。