名門の魔法学校を首席で卒業した私、「女のくせに生意気だ」という理由で婚約破棄される〜代わりにもらってくれたのは、入学からずっと首席争いをしていた次席のライバル王子でした〜
最終話 「想いを言葉に」
「はぁ〜、やっと帰ってこられた……」

 書斎に漂う本の香りを吸い込んで、私は楽園への帰還をしみじみと感じる。
 黒竜(シャドウ)との激闘から今日まで、本当に息つく暇もなかったという感じだったから。
 祝賀会は誇らしかったけど、その後は黒竜(シャドウ)との戦いについて鮮明な話を求められた。
 マーシュの断罪のための証言もしなくてはならなかったので、ここ一ヶ月は取り調べを受け続けている気分になったものだ。
 むしろ黒竜(シャドウ)との激闘以上に疲れを感じたかもしれない。 

 けど、それももうおしまい。
 今日からまたのんびりとした生活が訪れる。
 この屋敷の書斎で、好きなだけ魔導書を読む日々が送れるんだ。
 ……と、そういうわけにもいかず、実はまだまだ予定がぎっしりと詰まっていたりする。

 黒竜(シャドウ)の暴走によって荒らされた森林地帯の復興。
 奥地の開拓が可能になったためその立案と作戦実行。
 黒竜(シャドウ)との戦いを鮮明に記録に残すという任務も王都側から課されている。
 本格的に作戦が立ったら、いよいよゆっくりできる時間はなくなってしまうだろう。
 だから魔導書を楽しめるのは今しかない。
 また忙しくなる前に存分に目に焼きつけておこうと思って、片っ端から魔導書に手をつけていると……

「ローズマリー、少しいいかい?」

「あっ、ディル」

 不意にディルが訪ねてきた。
 ディルがこの書斎を訪ねてくるのは、いつも決まって次の作戦が定まった時が多い。
 そう思って私は返した。
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