奴だけには恋したくなかった

彼女の振りしてくれないか

これから仕事の打ち合わせだと言うのに、給湯室から出る事ができない。

出て直ぐの場所で、男女の修羅場が勃発しているのだ。

「どうしてですか?私とは、遊びだったんですか?」

半泣きしているのは、会社の中で美人トップ10に入るだろう、総務課の女の子。

「君だって、楽しむだけ楽しんだだろう?」

そして泣かせている相手は私の同期で、”結婚したくない男№1”の異名を取る営業課の上島倖。

「ひどい。私は本気だったんですよ!」

「へえ。そう言って何人の男と寝てるの?」

すると、思い切り頬を打つ音が鳴った。

「最低!」

そう言い放って、女の子は走り去って行った。


またか。

私は心の中で呟き、奴に聞かれないようにため息をついた。

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