奴だけには恋したくなかった
「誰のせいだと思っているのよ!この鬼畜!」

そう叫んで、私は廊下を突っ走った。


打ち合わせのブースは、一番端にある。

ああ!何で奴のせいで、怒られなきゃいけないの?

その時だった。

ブースのドアが開いた。

「あ、美月ちゃん。」

「海田先輩。」

「よかった。あまりに遅いから、探しに行こうと思ってたんだよ。」

「すみません。遅れてしまって。」

私は勢いよく頭を下げた。

「いいんだよ。無事ならそれでいいんだ。」

「先輩……」

顔を上げると、先輩の天使のような表情に、心が癒された。


海田先輩は、私の上司。

入社当時から、私の教育係になってくれて、いろいろ教えてくれる方だ。


「もう聞いて下さいよ。またあの鬼畜に会ってしまって。」

「鬼畜って、上島の事?今度はどの女の子、泣かせたの?」

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