奴だけには恋したくなかった
「総務課の女の子ですよ。」

私は先輩と一緒にブースの中に入った。


「上島の奴、先週も泣かせてたよね。」

「何でも、君と付き合っているという事実はないって言ったらしい。」

奴は営業なのに、ここ企画部にもその話は知れ渡っている。

「一度、じゃあ何でその女に手を付けたんだ?って聞いたら。」

「うんうん。」

「仕事で必要だったからって。」

私は持っていた書類を、テーブルに叩きつけた。

「あの鬼畜!仕事の為ならどんな女でも、寝るのかよ!」

私は、腸が煮えくり返そうになった。


「美月さん、上島さんと同期だもんね。」

「言わないで下さい!」

数人いた同期の中で、もはや残っているのは、私と奴だけ。

奴がたった一人の同期だなんて、思いたくない!
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