奴だけには恋したくなかった
その時だ。

バイトの萌花ちゃんが、コーヒーを持って来てくれた。

「上島さんって、そんなに悪い人なんですか?」

「悪い人じゃない。あれは鬼畜!悪魔だから。」

皆から失笑が出る。

「萌花ちゃん、あんな奴に近づいたら、泣かされるよ。」

「はい。気を付けますね。」

その可愛さに、胸がじーんとなる。

まだ大学生の萌花ちゃん。

将来は広告会社に勤務したいと言う、純粋で素直ないい子だ。


「はあ。それにしても、何で皆あんな奴の手口に乗るのかな。」

私は首を傾げた。

「手口って……手口だったら、皆分かるんじゃない?」

「え?どういう事ですか?」

「まるで恋愛しているかのように、思わせてくれるからね。」

隣に座っている、莉乃さんがため息をついた。
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