奴だけには恋したくなかった
できるだけ、奴には関わりたくない。

そう思いながら、日々を過ごしていたのに。


「ああ!もう!コピー多すぎ!」

ペーパーレスの時代に対応していないこの会社に、嫌気が差した時だった。

「部数設定すれば、一冊ずつ出てくるだろ。」

直ぐと隣から、まさかの声がしてきた。

鳴れた手つきで、その設定をするところ。

恐る恐る隣を見ると、奴がいた。

「何でここにいるの!」

「悪かったな。仕事で来てるんだよ。」

営業の奴が、企画部にいるなんて。


「ああ、上島君。この前の仕事、企画通ったよ。」

海田先輩が、奴に声をかける。

「龍馬先輩、ありがとうございます。」

やけに先輩に、馴れ馴れしい。

私は、奴を睨んだ。


「何、睨んでんだよ。龍馬先輩は大学の先輩なんだよ。」
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