君を愛してしまったから
不運と幸せー1章
【その時目があってしまったのだ。】
・・・


僕は高校2年生。櫻井優衣と名乗る。女性ぽい名前だって知っている。でも母親から俺のことを思って付けられた名前だから好きだ。


ー『君と似ているな。』
ー《そうだね、可愛い子だわ。》
ー『名前をどうしようか?』
ー《そうね、優衣とかどう?優しい人として育つためにいい名前でしょう?》
ー『じゃ、それに決定だ。』

ていうようなことが起こったらしい。彼らぽい出来事だ。姉妹も兄弟もいない。ただ俺、母親と父親の3人家族だ。父親はある会社で働いてて、母親はペットショップで働いている。ここまで聞いてただ普通な高校生だと思う生活。でも残念ながら俺は彼らがきっと求めていた子供ではないだろう。なぜなら俺は能力者として生まれた。その上、物を動かす便利な能力でも時を止める有利な能力でもないのだ。

愛能力者って知った時は最悪だった。

知った時は7歳頃かな。その日は俺の誕生日で能力プロテクションコンタクトレンズをもらった。俺を他の能力者から守るためではなく、身の回りの人を守るため。普通と言える生活をおくるため。これは呪いとしか言えない。俺の能力は他の愛能力者と違っていて、誰かと目を合わせるだけでその相手が俺に恋をしてしまう能力。他の愛能力者は相手を決められて、誰かと目があっても何も起こらない。だから俺はただ不運な人だ。この能力と生まれたせいで子供の頃から友達を作れなかったし、保育園にも通えなかった。でも今はそれを気にしていない。なれたせいか、これで十分幸せだ。親たちさえいればそれでいいのだ。人関係は苦手だし、嫌いになった。漫画やゲームをする方がまし。誰かと会話をするよりもずっとましだ。


こんな俺だけど、親たちは何も後悔もなさそうにしている。そもそも誇りに思っているような感じだ。俺は賢くもない。スポーツが苦手で人間と関われない。才能もないバカ息子だ。それなのに彼らは俺を愛してくれる。幸せそうに生きてくれるのだ。これが幸せではなければなんと言うんだ?何もできない息子を後悔なに一つもない親たちの子供で幸せではないはずがない。彼らは素敵な人達だ。俺は彼らを愛している。くだらない俺のやりたいことや欲しいものをしてくれたり、買ってくれる彼らを愛している。友達がいなくって悲しかった頃に毎日俺と一日中遊んでくれてた彼らを。勉強をせずにただゲームや漫画を読んでいる俺に何も文句言わずにただアドバイスや相談になろうとする彼らを。友達が欲しくないと決めた俺の選択を受け入れてくれた彼らを。言うでもないけど、俺は彼らを心の奥から感謝をしている。彼らがいるおかげで幸せなんだ。面白くってカッコいい父親。優しくて賢い母親。彼らが俺の恩人だ。

存在感のある2人は誰からも好かれる。逆に俺は家外だと存在感すらない。知られていないただの空気になってしまう。もちろんそれの方がいいのだ。誰とも話さなくてすむし、誰一人声をかけられないからゲームや漫画を読んでいる時に邪魔をされないのだ。俺はこのままがいいのだ。でも親たちのためにもっと勉強していい成績をとってあげたい。正直どうやって高校に受かったかは知らない。でも受かったって知られた時父がボロ泣きし初めて、母は俺を強く抱きしめていた。初めて彼らに何かいいことでもやれたとなぜかあの時思った。
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