首なしアリスは■■のもの
それは物理的なものではなく、鼓膜に届いた、大きな衝撃。
恐る恐る目を開けて、その正体を理解した。
「……頭の悪いトランプ兵」
冷たい視線を恭君へ向ける水無君は、憎らしげに呟いた。
彼の右手に握られているのは――拳銃。
その銃口が向いた先では、恭君が血を流して倒れていた。
銃声――ここに来るまでは聞いたことなんてなかったのに、いつしかもう聞き慣れてしまいそうだ。
「……どうして」
どうして水無君がそんなものを?
見たことのないような冷めた表情の彼が、何を考えているかわからない。
恐怖に邪魔をされて、上手に言葉が出なかった。
「……ごめんね、黙ってて」
……彼はこれから何を言うのだろう。
不安と絶望の中に少しだけ、場違いな期待が顔を覗かせる。
「僕の部屋に……置いてあったんだ。白羽部長や、恭や波多と同じようにね」
その答えに少しだけ安心して、少しだけ残念に思う。
――水無君がハートの女王だと言ってくれればよかったのに。
私の中の黒い部分がそんなことを呟いたので、慌ててその言葉をかき消した。
「そう……だったんだね。ありがとう、助けてくれて」
私がそう言うと、水無君の顔にはすうっと先ほどまでとは全然違う表情が下りた。