首なしアリスは■■のもの
「心、痛いよ……」
「水無はきっと、ありすが好きなんだよ。私、前から思ってたんだ。私には冷たくするけど、ありすには優しいなって。それを言ったら否定しなかったよ、あいつ。笑っちゃうよね、嘘でも否定してくれれば、よかったのに」
心が泣いているのがわかった。
私の胸に顔をうずめていても、その声は悲しんでいる声だ。
「心……」
私はやっと、迷っていた両腕を心の背中に回した。
「泣かないで、心」
きっと、悲しんでいるだけ。
きっと、混乱しているだけ。
他人を傷つけようとする心なんて、きっと本当はいない。
だから、泣き止んでほしかった。
また元気になって、笑って、いつもの心に戻ってほしかった。
「……ありすは、優しいね」
いつの間にか心は爪を立てるのをやめて、私の腕にしがみついていた。
「じゃあさ、私と組んで」
耳元で囁かれたのは涙声なんかではなくて、けれどいつもの心の声でもなかった。
悪意のこもったその声音は、私の背筋に冷たいものを走らせる。
「水無のこと、殺してよ」