首なしアリスは■■のもの
「そ、そんなの、できない……」
何を言っているの?
心はどうかしてしまったの?
頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
「ね、ありす、ありすがハートの女王でしょ? 水無のこと、処刑してみせてよ」
それを聞いた瞬間、勝手に体が動いていた。
私の両腕が突き飛ばした心は、地面に倒れこむ。
「私はハートの女王じゃないし、水無君を殺したりしない……! 心、自分が何言ってるかわかってるの?」
「……そんなの」
心は俯いたまま立ち上がり、スカートを払う。
「そんなの、わかってる。言っておくけど私は正気だよ」
顔をあげた心をいつも通りだとはーー正気だとは、思えなかった。
すべてを諦めたような眼差しで、口元だけが嘲るように歪んでいる。
「正気じゃない! おかしいよ!」
私がそれを言ったが早いか、心はほぼ同時に、私に見覚えのあるものを突き付けた。
「黙って」
心に言われた通りに、私は口をつぐむ。
穏やかであるはずの昼下がりに、あまりに不似合いすぎる鈍色が光る。
心の手にある拳銃――その銃口の先は、しっかりと私を捉えていた。