首なしアリスは■■のもの
しかし、聞こえてくるはずの銃声は、聞こえなかった。
そうっと目を開ける。
「……なんで」
そこには、呆然と自分の手を見つめる心の姿があった。
彼女はもう一度、引き金を引く。
今度は目を開けたまま、その時を迎えたけれど、やっぱり銃声が聞こえることはなかった。
「なんで、なんでよ……」
心は壊れたように同じ言葉を繰り返して、同じ動作を繰り返す。
しかし私が撃たれることはなく、カチャカチャと金属音が響くだけ。
「心……」
何だかいたたまれなくなって、傍へと歩いた。
「来ないで!」
心は目から涙を溢れさせながら、なおも引き金を引くことをやめない。
「ねえ心、もうやめて……」
私は拳銃に手を伸ばす。
心は、それを拒まなかった。
心の緩んだ手の中から拳銃を引き抜き、捨てた。