首なしアリスは■■のもの
そんなざらついた声を聞くのは何度目だろう。
心はビクリと肩を震わせて、手の力を緩めた。
水無君が心を私から引き離す――そうして数秒も経たないうちに、いつの間にか近くに来ていた仮面たちが心の体を抱えていた。
解放された喉を、一気に不足分の空気が通り、思わずせき込む。
「み、水無君……っ……」
水無君は、仮面たちを止めようとしなかった。
それは私も同じで――咎められることではない。
仮面たちに抵抗したところで、何も変わらないのはわかりきったことだ。
ただ、心が処刑台に連れられる様子を無表情で見つめる水無君が、ひどく不気味に思えて仕方ない。
心は仮面たちの腕の中で項垂れたまま、「どうして」という言葉を繰り返している。
……心が処刑されてしまう。
いくら止めたいと願っても、私たちは抗う術を持ち合わせてはいなかった。
『準備が整いました。庭園にお集まりください』
立ち尽くす私たちの鼓膜が震わされる。
喚く心に、胸が痛む。
何もしてあげられない。
恨まれても、憎まれても、救いを求められても。
私たちはただただ無力で、彼女の惨い死を眺めることしかできなかった。
――これで最後だ。
心の命が終わるというのに、私は何を言っていいかわからなかった。
「心……ごめん……」