首なしアリスは■■のもの
見れば見るほどに、近づけば近づくほどに、足がすくむ。
涙が止まらなくなる。
――心は最後に、何を思って死んでいったのだろう。
……考えても、仕方のないことだった。
処刑台の上、心の体の傍に拳銃と弾丸を置いた。
そして、心の頭部を拾い上げる。
思ったよりも、重く感じた。
可愛い顔も、いい匂いのする髪も、今はもう、見る影もない。
……グロテスクであるはずの光景を、不思議とそうは思わなかった。
手のひらに、ぐちゃりとした感触。
制服に、心の血液がべったりと付いた。
そんなの、何とも思わなかった。
ただ、悲しくて、悔しかった。
……彼女が、少しでも報われますように。
それだけを願って、手を合わせた。
心との別れを済ませた後で、ふと気づく。
――咲真が、姿を見せない。
処刑の前の放送で庭園に集まれと言っていたけれど、それでも咲真は来なかった。
……何かあった?
思わず嫌なことばかり頭に浮かんで、慌てて否定する。
……咲真を見つけないと。
ここにはもう、たった三人しかいない。
咲真にまで何かあったら私は、それこそ正気でいられないかもしれない。
――少し経ったら……水無君の気持ちの整理がついた頃、咲真を探すのを手伝ってもらおう。
それまで私も、部屋で休むことにした。