首なしアリスは■■のもの
笑い声だけ
水無君の部屋の前で、落ち着いたら声をかけてと伝えた。
けれど反対に、私がその気になったらいつでも協力すると言われてしまった。
とりあえず一度自分の部屋に帰ってきたはいいものの、すぐに咲真を探しに行きたい。
鏡の前に立つと、涙でぐしゃぐしゃの顔が映った。
少しだけみんなのことを考えて、さらに頬が濡れた。
……でも、泣くことならいつでもできる。
だから、今はもうやめる。
涙を拭って冷たい水で顔を洗うと、少しだけすっきりした。
そういえば、制服が真っ赤なことに気がついた。
水無君に驚かれるかもしれないけれど、仕方ない。
制服はそのままで、水無君の部屋に向かった。
部屋から出てきた水無君は、やはり血塗れの私に驚いて、一瞬言葉を失った。
しかしそれには何も触れず、「行こうか」と声をかけてくれた。
……水無君は今、どういう気持ちでいるのだろう。
涙を見せず、弱音を吐かず、平然としている。
気が触れているわけでもなければ絶望しているわけでもない。
そんな彼を見て、私もそれくらい気丈で在りたいと思った。
二階、三階の個室を二人で探したが、咲真は見当たらなかった。
いよいよ不安に押しつぶされそうになってくる。
「……りす、ありす」
気がつくと、水無君に顔を覗き込まれていた。