首なしアリスは■■のもの
咲真の目はもう、正気の色を保っていない。
……彼はきっと、信じることを諦めてしまった。
彼女の私ですら、友達の水無君ですら、彼の心にはもう触れられないと悟ってしまう。
「でもやっぱり、ありすが先か?」
楽しそうに言う咲真を、とても見ていられなかった。
「……ありすのこと、信じないの?」
水無君が言うと、咲真はそれを鼻で笑う。
「――最初から俺は、誰も信用してない」
咲真の言葉に、頭が真っ白になるのを感じた。
……全部、嘘?
一緒に頑張ろうとしたのも、あの日一緒に寝た夜も。
心の中ではずっと、私を疑っていたの?
涙が溢れて止まらなかった。
「咲真……どうして」
「信じるほうが馬鹿なんだ……誰が敵かわからないなら、初めから全員疑うべきだろ」
「でもさぁ、咲真」
咲真は私と違い平然とした様子の水無君を見て、次の言葉を待った。
「ありすはハートの女王じゃないよ」