首なしアリスは■■のもの
「な、なんで……っ」
咲真は何もかも信じられない、そういった感じで目を見開いている。
私だってそうだ、何より――水無君がハートの女王なんて。
水無君の手にある端末には、部員みんなの名前が書いてある。
水無君の指は、咲真の名前の上に乗せられていた。
「……水無君、なんで……?」
私が訊ねても水無君は、小さく笑うだけだった。
食堂のドアが開き、仮面たちが姿を現す。
咲真が両脇を抱えられ、連れ去られていく。
「やめろ……っ、なんで――ありす、助けてくれ!」
「咲真……っ」
私に向かって伸ばされた咲真の手――私は思わずそれに手を差し伸べた。
しかし、咲真の手に触れることは叶わなかった。
「お前がありすに触れる資格はないよ」
水無君が、咲真の手を叩き落したのだった。
優しいはずの水無君の瞳は、これ以上ないくらいの冷酷さで満ちている。
……咲真を連れて行かないで。
必死で仮面たちにしがみつくが、いとも簡単に振り払われてしまう。
「咲真、咲真!」
「ありす――ごめんな」
諦めきった表情で咲真は言って、扉の向こうへと連れて行かれてしまった。
追うことはしなかった。
咲真が死ぬ瞬間なんか、とても見られない。
「あーあ、最後まで本当、ずるい奴」
水無君がため息をつく。
その表情には、不気味な笑みが張り付いていた。