首なしアリスは■■のもの
「ねえ、何言ってるの? 水無君、どうかしてる! おかしいよ……」
「おかしい、なんて……ありす、なんで君がそんなこと言うの? 僕が何を思おうが、それはすべて真実で、何ひとつおかしくなんてない。間違っていない、ねえありす、それを教えてくれたのは君じゃない?」
……彼は間違っている、正しくなんかない。
私が彼に、何を教えたというのだろう。
水無君とそんな類の会話を交わしたことなどないはずだ。
思い当たることは何もなかった。
「……ねえ、本当に忘れちゃったの? ありすとの会話、僕は一字一句違わずに覚えてる自信があるよ」
「――水無君とそんな話、したことない!」
私が言うと、水無君は少し悲しげに顔を歪めた。
しかしその表情は、すぐに一変する。
「ああ、確かに、『僕』とは話してないから、仕方ないよね。自分の言ったこと、聞いたら思い出すかな? 『あなたは変じゃないし、間違ってないよ。無理に変わろうとしなくていいと思う。ねえ、だからもう泣かないで、――』」
水無君が言う台詞の途中、いつかの光景がフラッシュバックする。
……ああ、思い出した。
確かに私は、そんな台詞を吐いたことがある。
でもそれは、水無君にではない。
「『――衣純ちゃん』」