首なしアリスは■■のもの
誰がための処刑台
◇◇◇
――彼女、否、彼といったほうが正しいのか。
とにかく、かつての衣純――水無はとうとうやり遂げた。
復讐を終え、歪な愛を貫いたのだ。
モニターの向こうで立ち尽くす彼が、どんな顔をしているのか。
この目で確かめるのが楽しみで仕方がない。
はやる気持ちも抑えず、足早に庭園へと向かう。
庭園へ通ずるドアを開けば、彼は微動だにせず、未だに処刑台のほうを向いて立ち尽くしている。
ドアを開く音は聞こえただろうに、こちらを一瞥することすらしない。
――まあいい、エンディングに浸っているのだろう。
もうすぐ役目を終えようとしているハートの女王に、称賛の拍手を送る。
「おめでとう、水無」
僕が声をかけて、ようやく彼は振り向いた。
「……やっぱり、あなただったんですね」
彼は口角を僅かに上げたまま、せっかくの綺麗な顔を少しだけ引き攣らせながら呟いた。
「気づいてくれて、うれしいよ」