首なしアリスは■■のもの
「……どうしてですか?」
彼は眉一つ動かさなかった。
残念だ、自らの死を意識すれば少しは恐怖するかと思っていたのに。
しかし、その理由はすぐに思い当たる。
きっと彼にはもう、生きる意味ないなどないからだ。
愛するありすはもういない。
傷まみれで孤独な彼はこれ以上、生きることを放棄したのだ。
僕に問うたのも、おそらく本当に答えを知りたいわけではなく、惰性だろう。
すべてを知った彼の瞳は暗く、生きているのか死んでいるのかわからない。
「君を愛してるから。僕と君はよく似ているのさ、僕だって愛する人の色々な顔を見てみたい」
「……そうですか」
彼はそれから、何も言わなかった。
その瞳の闇が僕に対する絶望ならいいのに、彼は僕を見てさえいない。
けれどそれでも構わなかった。
それはそれで、初めて見る彼の顔だ。
僕の合図で、仮面たちが庭園に現れる。
金を餌に募った馬鹿な奴隷たちは、水無を処刑台の上に引っ張っていく。
あっという間に頭を固定された彼は、無ともいえる表情で僕を見た。
「……最低です」