首なしアリスは■■のもの
――さっきからこの声は一体、何を言っているのだろうか。
処刑、とは何のことだろう。
咲真は眉をひそめて、次の言葉を待っているようだ。
『君たちのいるその場所に、処刑台を用意しておいた。処刑されたくないのなら、先に処刑することだ。君たちがハートの女王を処刑することができたなら、ここから脱出するヒントをあげよう。健闘を祈るよ』
物騒な言葉ばかりに鼓膜を震わされて、背筋に悪寒が走る。
未だに掴めていない状況を少しでも理解しようと、一方的に並べられた言葉を頭の中で反芻する。
脱出という単語のおかげで最初にわかったのは、どうやら私たちはこの場所に閉じ込められているらしいということ。
そして、ハートの女王という人物は私たちを『処刑』したがっていて、私たちとその人物は互いに相手を『処刑』するかされるかの関係だということ。
あまりに現実離れしたこの状況に、どこかぼうっとしていた頭が奥の方から突然冴えていくのがわかった。
なんとなく状況を理解したところで、誰が、何故、私たちを――そんな新しい疑問が次々と湧くばかりだ。
恐怖と不安に襲われそうになるが、咲真に抱きしめられている安心感からか、負の感情に呑まれることはなかった。
『アリスたちを演じて、どうか楽しませてくれよ』