首なしアリスは■■のもの
――それはあまりに突然で、一瞬だった。
桃矢君の頭が、宙に舞う。
……ああ、人が死ぬのはこんなに簡単なんだ。
目の前の光景を理解する前に浮かんだのは、そんな他人事のような感情だった。
「嘘……もう、嫌……!」
桃矢君の頭が落ちて、軌道上の緑の芝が赤く染まる。
……こんなのが現実だというの?
すべて夢ならいいのに……目を閉じても、みんなの声はすぐ傍で聞こえてきて、ここは現実だと思い知らされる。
「――ハートの女王は実在するってこと……?」
「桃矢はそいつに殺されたのか……?」
私と咲真は、信じたくない思いをつい零した。
「……この中の誰かに、な」
私たちの声に応えるように、波多君がそう呟く。
『三月うさぎは処刑されました』
私たちが立ち尽くす中で、耳障りな声の主だけが楽しそうに笑っていた。