首なしアリスは■■のもの
「何、これ……」
昨日のことが夢であったかのように、庭園は綺麗になっていた。
ギロチン台は初めて見た時と変わらぬ光を放っている。
辺りを染めていたはずの桃矢君の血液は見当たらない。
しかし……庭園の隅に横たわっている白羽部長の遺体が、夢なんかではないことを物語っていた。
「仮面のやつらが片付けたのか……?」
咲真も、目を丸くしている。
桃矢君の遺体は、きちんと弔われたのだろうか。
……こんなことをする犯人だ、きっと、その望みは薄いだろう。
ここから出たら、白羽部長も桃矢君もきちんと弔ってあげたいと思う。
――消えた桃矢君の痕跡、変わらぬ白羽部長の惨状。
他には、特にこれといったものも、もちろん脱出口なんてとても見つからなかった。
……そうして私たちは諦めて、それから何日が経つだろう。
庭園と屋敷を行き来する、変わらない日々。
切り取られた空はいつだって穏やかで、私が今どこにいるかを忘れてしまう。
平和を装う景色の後ろには、いつ殺されるかわからない恐怖が付いて回っているというのに。
ふと不安に襲われたときは、咲真と共に庭園に行くことにした。
不毛な行為だとしても、部屋でふてくされているよりは気を紛らわせることができた。
「あ……みんながいるよ?」
今日もそうして庭園に行くと、波多君、恭君、祐奈、千結の姿が目についた。