首なしアリスは■■のもの
もう、無理だ。
もう、遅い。
こうなってしまっては、祐奈はもう、救えない。
胸が張り裂けそうだけど、これは私の、私たちのせいで起きた結果だ。
目を逸らすことは、許されなかった。
『処刑の準備が整いました。庭園にお集まりください』
そんな放送が流れると、すぐに水無君と心が屋敷から出てきた。
「ゆ、祐奈……!?」
「どうして祐奈ちゃんが……」
戸惑う二人に、誰も弁明しなかった。
「……な、……てやる」
祐奈が何か呟いている。
――仮面の一人が、ギロチンの刃を落とそうとした、まさにその瞬間。
「――あんたたちみんな、呪ってやる!」
そんな金切り声と共に、祐奈の首は刎ねられた。
私はその瞬間を、生涯忘れないと確信した。
私たちの決断で、人の命を奪った瞬間を。
あんなにも恨みの籠った、断末魔を。
千結は「ごめんね」という言葉をうわごとのように繰り返している。
……どんなに謝っても、もう祐奈には届かない。
今、私たちが願うべきなのは、ハートの女王の正体が確定することだけだ。
どうか、彼女がハートの女王でありますように。
そんな願いはきっと、多くの保身を孕んでいる。
祐奈はハートの女王だったから仕方ない、そう言いたくて仕方がない。
――しかし、不快なあの声は。
あの耳障りなノイズと共に。
『ダイナが処刑されました』
白々しいほどの嘲笑で、私たちの祈りをかき消した。