首なしアリスは■■のもの



「この音……何だろう」


 心と顔を見合わせて、耳を澄ませる。

 ……おそらく、下の階から聞こえている。


「……行ってみる?」


 少しだけ怖いと思ったのは心も同じだったようで、どちらからともなく手を繋いだ。

 一段一段、確かめるようにゆっくりと階段を下りる。

 それにつれて、悲しい音は大きくなっていく。

 一階について音源を探ると、部屋の前に行き着いた。

 ――音楽室。

 確かここには大きなグランドピアノがあった。

 誰かが、弾いているのだろうか?

 ……犯人だったらどうしよう。

 誰もいないでほしい――そう願いかけたが、よく考えればそれはそれで恐ろしい。

 どんなに嫌な想像をしたところで、まずはこのドアを開けないと答えには辿り着けない。

 心と一緒にドアノブに手をかけた。

 ドアを開けると、メロディーは止まる。

 同時に、探し人を見つけた。


「千結!」

「あ、ありす、心……」


 グランドピアノを演奏していたのは、彼女だったらしい。

 奏者用の椅子に座る千結は大きな楽器との対比で余計に小さく見える。


「……大丈夫?」


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