首なしアリスは■■のもの
「な、何してるの?」
「なんか音楽が聞こえたから来たんだけど、女子だけで話してたから入りづらくて……」
……ということは、私たちとほぼ同じタイミングでここに来て、ずっと盗み聞きしていたということだろうか。
「ずっと聞いてたの?」
「いや、ありすのことを待ってただけだよ」
少しだけ口の端を上げる咲真を見ると、咎めようとした気持ちは消えてしまった。
「……咲真はありすのこと大好きだよねぇ、本当」
心がため息混じりに言う。
……私も咲真も、すぐに否定の言葉は出ない。
「まあね、心も部屋まで送るよ」
咲真は心の言葉をさらりと受け入れたが、反対はそうはいかなかった。
「咲真は優しいね。でもいいよ、私は。仲良く二人で帰りなよ」
部屋までの道のりなんてすぐなのに、心は変に気を遣ってくれたのか、一人ですたすたと歩いて行ってしまった。
「……帰ろ?」
咲真に手を握られながら、階段を上がる。
「ありす、俺はね」
咲真は私たちの話を聞いて何を思ったのかーーなんて巡らせた思考は、ふいに真剣な声色で塗りつぶされた。
「……みんなで助かろうなんて、思ってない」