首なしアリスは■■のもの
「――どうして?」
「本当はさ……わかってるだろ?」
咲真に言われて、否定も肯定もできなかった。
「……なんて、冗談だよ、ごめん」
咲真は元から、表情が乏しい。
けれど私は、みんながわからなくても私は、咲真のわずかな表情の違いで何を思っているかわかる。
わかるーーつもりだった。
でもたった今、その自信は消えて無くなりそうだった。
……咲真が、心の奥底で何を考えているのかわからない。
私が何も言えないでいるうちに、気づけばいつの間にか部屋の前まで来ていた。
「……おやすみ」
何となくそんな咲真に気まずさを感じてしまい、そんな言葉だけをぽつりと呟いて、ドアノブに手をかけた。
しかしその手の上に、咲真の手のひらが重ねられた。
「――今日はさ、一緒に寝よう?」
咲真が何を言っているのかわからなかった。
だって、部屋には自分以外入れてはいけない決まりになっている。
破れば、頭のおかしい犯人に何をされるかわからない。
「それは――」
私が言いかけた言葉は、途切れてしまった。
それは、咲真に強く抱きしめられたから。