首なしアリスは■■のもの
「……恭が」
水無君はそこまで言って、後は難しい顔をするだけだった。
「――死んでないよな?」
背後の声に振り返ると、いつの間にか咲真が立っていた。
「ていうかなんで、ありすが咲真の部屋にいるの? 心配したんだよ!」
心と水無君が驚くのも無理はない。
私も昨日までは、他人同士で部屋の行き来はしてはならないものだと思っていた。
「後で説明する。それより恭がどうした?」
「庭園で……」
心は目を伏せて、それ以上は言いたくないようだった。
「庭園で? 無事なのか?」
「無事かって言われると……でも、生きてる」
水無君の物言いはあまりにわかりにくかった。
咲真も自分で見たほうが早いと判断したようで、すぐに部屋を出て庭園に向かうことにした。
「ねえ咲真、なんでありすを部屋に……」
階段を駆け下りながら、心がそんなことを聞いていた。
咲真は「べつに」なんて言って誤魔化している。
「ありす」
「なに?」
水無君に呼ばれて、私は足を止めないまま彼を見る。
その顔があまりに真剣だったので、すこし面食らった。