首なしアリスは■■のもの
「あんまり危ないことしないで」
「……うん……?」
――その言葉がどんな意味なのか、即座に理解できる思考力は持ち合わせていなかった。
でも、前を走る心からなんとなく嫉妬されているような気がして、水無君と長話をするのは得策ではないと考えた。
屋敷の扉の前で一息つき、外に出る。
恭君が庭園で、どうしたというのだろう。
「二人ともあんまり音を立てないで、あれ見て」
水無君の視線が示す先には、恭君の姿があった。
彼は薔薇の生け垣の前で座り込んで、何やら手を伸ばしている。
ただ手を伸ばしているというより、薔薇を触っているように見える。
「……何、してるの……?」
「まだ、見てて」
言われた通りにしていると、恭君は何かを手に取っておもむろに立ち上がった。
彼が向かう先には――遊園地を彷彿とさせるオブジェ。
彼の身長よりも少し低いくらいのティーポットに近づくと、その蓋を開けている。
……確認していなかったけれど、あれって開けられるんだ。
変に感心するが、恭君の行動の真意は掴めない。
彼はティーポットの中に手を伸ばして、出すが、特に何かを取り出したような様子はない。
その後は律儀に蓋を閉めて、再び生け垣の前に座り込んで薔薇の花を触っている。
「……さっきからずっと、あれを繰り返してる」