首なしアリスは■■のもの
「うん、覚えてるけど……そんなに不安そうな顔しないで! ありすだって、きっとそのうち思い出せるよ」
自分の記憶がないからといって、そんな顔をしているつもりも、そこまで深刻に考えているつもりもなかったけど、少しの不安が表情に表れてしまっていたみたいだ。
「ありがとう、心」
「うん、それにみんなもいるし、ありすには優しい彼氏がいるんだから大丈夫だよ!」
「な、なにそれ、やめてよ」
「ふふ、照れちゃって、うらやましいなぁ」
咲真との付き合いは長いけれど、改めて言われると少し照れてしまう。
それに心の言い方ではまるで、私だけ彼氏がいるかのようだ。
「心にも水無君がいるじゃん?」
「んー、水無はまぁ、咲真ほど甘やかしてくれないしね」
少し寂しげに笑った心を不思議に思いながらも、それ以上問い詰めることはしなかった。
恋愛の話は普段なら盛り上がる話題だけど、今はそれよりも考えるべきことがあるはずだ。