首なしアリスは■■のもの
波多君はそう言うが……全員、なんて揃ってはいないはずだ。
一人、欠けている。
「全員? 千結ちゃんは……」
「いる、一応」
嫌な汗が伝う。
気づけば、私はティーポットへと向かっていた。
「ありす!?」
咲真、水無君に心も私に続く。
ティーポットの蓋を持ち上げ、中を覗き込む。
その瞬間私の目に飛び込んだのは、千結の変わり果てた姿だった。
曲がることない方向へ折れ曲がった関節、いたるところにある切り傷――。
恭君がやったのだろうか?
『絵の具』を得るために、こんなことを?
理解できない。
やはり彼は頭がおかしくなってしまったのだ。
千結は、乗り越えたのに。
せっかく悲しみを乗り越えて、頑張ろうとしていたのに。
こんなにもあっけなく、彼女の決意は無駄になってしまった。
自分の意志と関係なく、私は膝をついてへたり込んだ。
落としたティーポットの蓋が、芝と土を抉った。
三人が私に追いついて、咲真が真っ先にティーカップを覗き込む。