首なしアリスは■■のもの
「だからって、こんなこと……」
心が波多君をねめつける。
その視線には憎しみ、怒り、様々な感情がこもっているのが伝わってくる。
「ああ、演じても何も変わらなかった。ただ犯人を喜ばせただけだったな」
波多君は少しも悪びれる様子はない。
彼もまた、気が触れているのだと思った。
「波多、お前、人を殺したんだぞ……?」
咲真が言うが、波多君はそれを鼻で笑う。
「だからなんだ、人殺しなのは全員同じだろ。祐奈は俺らに殺された! それともあれは、自分のせいじゃないでも?」
咲真は目を逸らして口を結ぶ。
波多君の言う通り、私たちみんなの意志で祐奈が死んだことは事実だ。
けれど、千結を自らの手であんなふうに殺すなんて、あんまりだ。
「もう、遅いんだよ。今さら善人ぶったところで何になる? 俺はいくらでも悪人になる、ここから出るためならな!」
……もう、彼を止めることはできないと思った。
もう遅かった、何もかも。
「――演じたところでこんな悪夢が終わらないなら、怪しい奴から殺していく」
波多君は先ほどまでの饒舌が嘘のように、呟くように言った。