ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした

死神の秘密

凛が、翼の胸板に顔を着けたまま寝息を立て始めた。

なかなか寝付けない翼は、先ほどひとりで部屋を抜け出した時のことを思い出していた。

凛の入浴中、落ち着かない思いでいた翼はひとり、ロビーへと降りたのだった。


凛の年末年始の休暇が終わらぬうちにと、翼はこの小さな新婚旅行と称した温泉行きを計画した。
凛とのかけがえのないひと時を過ごそうと心に決めたものの、どうしても不安の影が胸の奥にちらついて、心から楽しむことができない。

ロビーを見回しても居場所がないような心地がした翼は、外の風に当たることにした。夜空には月が輝いていた。眼下に流れる川のせせらぎを聞きながら、翼は十六年前の壮絶な体験を思い返した。
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