ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
十六年前、翼はあてどなく浮遊する魂だった。

いつから自分が浮遊する存在になって、どれほどの期間をそのように過ごしてきたのか、翼自身にもわからなかった。

形もなく、曖昧で、誰からも認められることのない存在でありながら、それでも存在し続けなければならないというのは、まさに地獄のような日々だった。

そんな出口のない絶望のような永遠の時間からすぐい上げられるように、翼に、初めて魂の器を当てがわれた。死神になるための試練を与えられたのだ。

───地上で生きる二人の男女を、無事に死に送り届けられるかどうか。

それによって、翼の死神になれるかどうかが決まる。失敗すれば再び器を失い、浮遊する曖昧な、誰にも認知されない孤独の世界に放り戻される。
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