ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
女は首を左右に振って、久々の夫の横顔をじっと見つめた。

「最近反抗期で、私が何か言うとうるさいって言い返すのよ。実はね、昨日の晩も喧嘩になって、今朝も口をきいてないの。あなたが家であの子を迎えてくれたら、昨日のこともふっとぶはず・・・」


その時、対向車がいきなり反対車線に入り込んで正面から突進してきた。

重たい金属がぶつかり合う猛烈な破壊音のあと、アスファルトをひっかきながら鉄の塊はガードレールに突っ込んだ。

ひしゃげて車体の長さが半分ほどになった赤い車の中で、フロントガラスの破片を浴びて額を真っ赤な血で濡らした二人は、ゆらゆらと首を回して互いの安否を気遣うように向かい合った。

枝が折れるようなくぐもった不快な音が鳴り、不安定に女の頭がぐらりと揺れて肩から垂れ下がった。
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