ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
血で赤黒く染まった顔の中で、二人は目だけをかっと見開いて見つめあっている。骨という骨が砕けているのに、まだ二人は死んでいなかった。

ボン、と間近で花火が炸裂するような音がして、車体が大きく跳ねた。後部座席に火が上がる。猛烈な高温のなか、二人は崩れるように抱き合った。

「だめ、死んじゃダメ」
女の心の声がする。

「大丈夫か」
女に向かって男が叫んでいるが、熱を吸って焼けただれた喉からは、もう声が出ていない。

「さあ早く行こう」
翼は結界を目指し、二人を促した。
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