ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
その二人が、フォトフレームに収まって、仲良く並んでにっこり微笑んでいた。

凛にプロポーズした朝、「事故で亡くなった両親だ」といって凛が翼に見せた写真にあったのは、その二人の顔だったのだ。

死神となって翼が初めて死に送り出した二人の男女は、凛の両親だった。

この事実に彼女は絶望するだろう。自分が両親に憑いた死神だと知ったら、どんなに裏切られた気持ちになるだろうか。

激しい孤独感に自分を追いやり、誰も信じることができなくなるだろう。そうなれば凛は、確実に幸せから遠ざかってしまう。運命を恨み、希望を失って生きる凛の姿を思うと、翼は胸を引きちぎられそうな思いだった。

いっそのこと今のうちに彼女のもとから姿を消すべきなのかもしれない。

翼はなかなか部屋に戻れず、ホテルの脇を流れる河原に降りた。せせらぎの音が広がる河原の岩のそばに小さな人影を捕らえた。岸辺亘だった。
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