ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「それは無理だよ。例外はない。初めからわかっていたことだろう」

「分かっていた。でも、そのことの本当の意味を、解っていなかった。大切な人を残して誰かが消えるというのが、どれだけ悲しいことか」

「たしかに悲しいことだ。でも、悲しい出来事を、人間は避けて通ることはできないよ」

「でも、俺がその悲しい思いを凛にさせるなんて、いやなんだ。誰かに裏切られたと感じるような経験を、これ以上凛にさせたくない」

岸辺はため息を吐き、死神に同情の視線をよこした。

「翼くん、君もずいぶんと人間臭くなったね」

「岸辺さん・・・実は俺は、十六年前、彼女の両親を死の領域に送り届けている」
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