ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
凛は翼の双眸を見つめながら、自分自身の感情を探っているようだった。

目の前の結婚相手が、両親を死に追いやった張本人だと知ったら、これほどに傷つくことはない。


「凛、本当にごめん」

凛は怒りに震えている。頬を涙が伝い、その涙のあとを次から次へと雫が走り落ちた。

「どうして」

凛は勢いよく立ち上がるなり手を振り上げ、テーブルを挟んで座る翼の頬を叩いた。紅茶のカップは床に落ちて割れた。

翼は頬に凛の平手を浴びる瞬間、歯を食いしばった。乾いた破裂音が耳元で鳴り、頬が痛んだ。
同時に、心が引きちぎられるような言い知れぬ痛みが、翼を襲った。
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