ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
インターホンの画面を見つめ、凛の動きが止まった。

「やあ、ひさしぶり。岸辺です」

快活な声で言った岸辺は、にこにこと笑って画面に向かってぺこりと薄くなり始めた頭を下げた。


「翼さんは、ここを出ていきました」

凛は岸辺を部屋に上げ、お茶を淹れながら言った。

「そうだったか」

岸辺はテーブルの上を眺めたまま、うなずいた。かすかにほほ笑んで、何かを思い出しているようだった。
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