ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
二股をかけていたというだけでも衝撃だが、相手が幼馴染だったということに、凛は何とも言えない脱力感を覚えた。

確かに拓斗はモテるけど、そこまで分別のない軽薄な男だったとは思いもしなかった。
しかも、幼馴染からの伝言という形で別れ話を持ち掛けるとは。
あまりに卑怯で冷酷な仕打ちではないか。

「思いがけず二股状態に陥ってしまった」と困惑する夏美を前に、「別れない」なんて我を張るわけにもいかないし、拓斗への非難を夏美にぶつけるわけにもいかない。

もちろん夏美を責めたい思いもある。
でもそれ以上に、凛という恋人がいながら夏美にアプローチをかけた拓斗への不満の方が何倍も大きい。

こんな終わり方ってあるだろうか。凛は空のグラスをうつろな目で眺めた。
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