ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
トンネルの入り口が、真っ暗な口を開いて線路を呑み込みながら電車を待ち受けている。
あの暗闇の天井が、電車の侵入と同時に崩落し、車体が押しつぶされる。乗客は圧死だ。他の乗客は逃げ場を失う。車中は出勤ラッシュで乗車率は百パーセントを優に超えている。パニックが起き、人々が波を引き起こし、大半の人が窒息死する。

「凛。ここは危ない。中に入って」

ガラス張りの待合席に、凛を押し込めて扉を閉めた。

凛に憑いた死神は、じっと翼をみつめている。

───俺の邪魔をする気なのか?
氷のように冷たい視線が翼に突き刺さり、脳の奥に想念を伝えた。
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