ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「ここで凛を死なせるわけにはいかない」
翼は死神に言った。

───なぜだ
「今やっと凛は幸せをつかみ取ろうとしているところだ」

───いまさら何を言ってる。お前はバカか。死は人を選ばない
「でも凛は」

───お前に人の死をどうこうできる権利はない
「でも人は死にたくないと思って、必死に生きてる」

───死にたい奴だってごまんといる。実際あの女だって最初は自分から死を選んだ
「あの時は一瞬の気の迷いだったんだ」

───一瞬の気の迷いだったとしても本人の心から生まれた意思だ。あの子に死んで欲しくないんだろう、お前が
「ああそうだ。それの何が悪い」

───神にでもなったつもりか
「いやなものはいやだ。僕は凛を死なせたくない」

───お前はそれでも死神か
「いや、今は・・・俺は人間だ。どうしようもないくらいに」

───人間なら、じゃまするな、どけ
「だめだ。行かせない」
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