ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした

何人かの乗客はその物々しい事態に眉をひそめ、逃げるようにホームから降りていった。

彼らに憑いていた死神たちが、マントに風をはらませて影に姿を変える。影は濃縮されて小さくなるとバサバサと羽を動かすカラスに姿を変えて飛び立っていった。
死の運命が急遽変更された人々に憑りついていた死神が、仕事の中止を悟って結界へと帰って行くのだ。

バサバサとあちこちでカラスの羽音が聞こえるのに、駅員も気付かない。

ただの変質者だと思い込んで翼の奇行を眺めている乗客の背後に立った黒い影たちも、一人二人とカラスに姿を変えて消えて行った。
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