ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
だが、しっかり者に見られる凛は、本当はもっと逞しい印象の男性を理想としていた。

見上げるほど背が高くて、冷徹なほど鋭い目をした強引な男に、力づくで抱き潰されて泣かされたい。ああ、もう許して、と男に懇願しながらも、腕づくで快楽の波に引き込んでもらいたい。

そんな相手を想像して、唇を噛んで、ひとりで果てた。
果てた後は空しさだけが、齧り終えた果実の種のように胸の奥に残った。
吐き出すようにため息をつき、ソファに身を投げ出した。

そこにスマホの震動音が鳴った。直感で拓斗ではないかと思った。
せめて、夏美を介さずに直接に別れの言葉をくれるつもりで電話をくれたのかもしれない。ならばまだ、凛は救われるはずだった。

けど、物事はそう凛の思うようにはいかない。

電話を振動させたのはカード会社からの返済金額の通知メールだった。
< 15 / 167 >

この作品をシェア

pagetop