ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「翼さん、どうしちゃったの、まって」
電車の音は、線路をきしませる明瞭な音へと変わる。
凛に憑いた死神が、くるりと身をひるがえした。その刹那、死神につかみかかろうとした翼の体が、線路の上に飛翔した。

両手は、何かを掴むように拳を強く握り締め、何かをじっと睨んでいるような顔だった。凛に憑いた死神を掴んでいるのだ。死神もろとも、線路へと落ちてゆく。

「翼さん」

凛が叫んで線路にむかって前のめりになった。駅員の腕が凛を引き留めた。
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