ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
一瞬の出来事が今、永遠のように長く、ゆっくりと凛の目に映っている。
翼が、宙に浮かんでいる。翼が、叫んだ。
「凛、生きろ」

次の瞬間、ドーンという爆発音とともに翼の体が粉々の肉片になって飛び散った。
凛の視界を、鉄の巨体が猛烈な速さで遮って駆け抜ける。電車は容赦なく、翼がいた場所を蹂躙し、しばらくして金切り声のようなブレーキ音を鳴らして止まった。

柔らかく、温かい飛沫が、凛の頬にベッタリとついた。右目に翼の血が飛び跳ねたのか、視界の半分は真っ赤に染まって見えた。
足元に、翼の肘から下の腕が落ちている。美しい指に、銀色の指輪がはめられていた。翼の手は、ぎゅっと、力強く握り締められていた。
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