ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
凛はその指を一本ずつ引き剥がし、自分の手をその手のひらに握らせた。
嗚咽も出ない。声も出ない。どうかその手に、自分をどこかに連れて行って欲しかった。さっきまでつなぎ合っていた、温かく優しい大きな手。みるみるその手から温度が失われ、主を失った指先は力なく解けて凛の手から離れた。

上空を、カラスの群れが旋回していた。
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