ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした

終章

凛の瞳に、涙の薄膜が張っている。


病室の照明を受けて、湖面のように光を揺らしながら、凛は、じっと天井を見据えていた。

唇は今も可憐な桜色だが、以前のようなふくらみはなく、表面の皮膚は乾いて縦じわが目立ち、ところどころひび割れている。
頬の肉も削げ落ち、ちりめん皺の薄い皮膚が肌が骨の上に一枚かぶさっているだけだ。髪は白く、耳の上までの長さで切りそろえられている。

毎朝櫛で整えてもらってはいるが、洗うのは週に一度がいいところだ。

「おはよう」
スーツ姿の男が、病室の白いベッドに横たわる凛に近づき、白い枯れ枝に似た手を取って両手に包む。凛は目を丸くしてから、眉をひそめた。
< 154 / 167 >

この作品をシェア

pagetop